「自分で考えることが大切」――
そう言われるたびに、どこかで息が詰まっていた時期がありました。
「自分らしく」「自分の意見を持って」
それができる人は素晴らしいと思う。
でも、常に正しい答えを自分の中から出さなきゃいけないなんて、
ちょっとしんどすぎると感じるときもあります。
だから私は、こう思うようになりました。
“借りる”ことは、弱さじゃない。
むしろ、自分を育てるための、素直な知恵の使い方なんだと。
たとえば、人生のどこかで「この人、すごいな」と思った誰か。
その人がどういう言葉を選ぶのか、
どんなときにどう動くのか、
落ち込んだときにどう立ち直るのか――
そういう思考や行動を、
そっと真似してみる。
最初はぎこちなくてもいい。
完コピになったっていい。
「自分らしくなきゃいけない」なんて、縛られなくていい。
それは決して、自分を失うことではなくて、
“自分の幅”を広げることにつながるから。
私自身、今の自分の考え方は、
たくさんの人の言葉や失敗、哲学や背中に影響を受けてきました。
すべてをゼロから生み出すのではなく、
「この人の考え、好きだな」と思ったら、
それを自分の中に少しずつ混ぜていく。
それは、自分を偽ることじゃなくて、
自分を育てるということ。
借りる → 試す → 自分の中で咀嚼する。
その繰り返しが、いつか自分だけの“思考の色”になっていく。
そして、思考の幅が広がると、
見える世界も、話せる言葉も、選べる未来も、
少しずつ、でも確実に変わっていく。
自分の中に何も浮かばないときこそ、
“誰かの思考”にそっと触れてみるのも、
立派な一歩なんです。
次は、そんな「思考の積み重ね」が実際に“人生”と結びついていく、
「経験」というテーマに進んでいきます。